特有財産のイメージをつかみましょう

1 これまでの復習と「特有財産」
こんにちは、弁護士の狩野です。
さて、ここまでの復習です。
離婚が頭をよぎったとき、まずは自分の立場が有利か不利かを知ることが大事とお伝えしました。
その上で、仮に離婚した場合に問題となる財産分与について、お財布と住居という観点から考えてみることを提案しました。
今回は、この「お財布と住居」について、より詳しく見ていきたいと思います。
そう、離婚について調べ始めたら必ず耳にするであろう、「特有財産」についてのお話です。
2 特有財産は、あなた自身の財産
以前の記事で、財産分与は、結婚するときに一緒になったものを分ける作業であるとお伝えしました。
この「一緒になったもの」というのは、より正確に言うと、「夫婦で一緒に作り上げたもの」を意味します。
たとえば、婚姻後に口座を作り、そこに毎月、夫婦が同額ずつ入金していたとします。
これは夫婦で作り上げた財産です。この口座残高は、夫婦の共有財産として、離婚の際には夫婦で分ける、すなわち財産分与の対象財産となるのが原則です。
他方、たとえばあなたが結婚前に何年もかけて一生懸命貯めた預金があるとします。ところが結婚後間もなく、相手の浪費癖が判明し、数か月で離婚することになりました。
このとき、「結婚した以上は、あなたの預金の一部は相手のものになる。」と言われたら、あなたは納得がいかないはずです。
「この預金は、私一人の力で貯めたものなので、相手に分ける義理はない。」あなたはそう言いたくなるはずです。これを法律上も根拠のある主張とするための理屈が、「特有財産」です。
すなわち、特有財産とは、あなた自身の財産であり、離婚によっても相手に分ける必要がない財産のことを言います。
このように、ある財産が特有財産になるかどうかということは、離婚に際して相手に分ける必要があるか否かという点で、とても重要な問題です。
3 特有財産には2種類ある
ここまでで、特有財産がどういうものかというイメージは、なんとなくついたと思います。
そこで次に、どのような財産が特有財産になるのかについて考えてみます。
特有財産には、大きく分けて2種類あります。
1つは、2で例に挙げたような、婚姻前からあなたが持っていた財産です。
もう1つは、婚姻後に、あなたが単独で取得した財産です。
それぞれどのようなものかを、次で見ていきましょう。
なお、特有財産の3種類めとして、「夫婦で特有財産とすることに合意した財産」というものもあります。たとえば「夫名義の預金は夫の特有財産、妻名義の預金は妻の特有財産にする。」と夫婦で合意することにより、預金をそれぞれの特有財産にすることができます。もっとも、この場合には夫婦間で争いが生じることはないと思われますので、ここでの説明は省略します。
4 婚姻前からあなたが持っていた財産
まず、「婚姻前からあなたが持っていた財産」についてです。
たとえば、婚姻前にあなたが自分で貯めていた預貯金、婚姻前にあなたが買った財産が典型的です。
また、婚姻前にあなたが自分で貯めていた預金を使って、婚姻後に買った財産も、特有財産になります。
さらには、特有財産である預金から発生した利息も、特有財産です。
要は、「あなたがその財産を取得するに当たって、相手の協力があったか」という点がポイントです。
ですから逆に、あなたが婚姻前から貯めていた預金と、婚姻後に相手からもらったお金を足してある財産を購入したとすれば、その財産の一部は特有財産、残りは夫婦の共有財産ということになります。
5 婚姻後にあなたが単独で取得した財産
次に、「婚姻後にあなたが単独で取得した財産」について見てみます。
典型例は、婚姻後にあなたが自分の親から譲ってもらった財産や、婚姻後にあなたが親族から相続した財産です。
ポイントはやはり、「その財産をあなたが取得するに当たって、相手の協力があったか」という点です。
あなたが親から譲られたり、相続した財産は、相手の協力がなくてもあなたが取得した財産であるため、特有財産となります。
6 迷ったら弁護士に相談を
今回は、特有財産について簡単に説明をしました。
ある財産が特有財産になるかどうかによって、財産分与の金額が大きく変わることがあります。
また、ある財産について「一部は特有財産だが、残りは共有財産である」と判断されることもあります。
このように、特有財産は重要な考え方である一方、複雑な性質も持っています。
そのため、もし特有財産かどうかについて迷うことがあれば、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。
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