財産分与を有利に進めるために知っておきたいこと

女性と男性が天秤に乗っている

1 離婚後の生活を具体的にイメージしてみる

こんにちは。弁護士の狩野です。

ここまで、財産分与と、その中でもよく問題となる特有財産ついてみてきました。

これにより、離婚をするとなった場合に夫婦で分ける財産として、何が、どの程度あるかについて、おおまかなイメージが持てるようになったと思います。

そのイメージが持てるようになったら次は、離婚後の生活を更に具体的にイメージしてみましょう。

どこに住み、どのような生活を送りたいのか。そのための生活費はどの程度かかりそうか。

そうすると、財産分与の対象となる財産のうち、どの財産を、どの程度自分のものにしたいのかという自分の希望が具体的に見えてくると思います。

ここまできたとき、冒頭でお伝えした、「自分の立場が有利なのか不利なのか」という視点が、大きく利いてきます。

2 財産分与の3つの要素

ここでまず、財産分与について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

財産分与には、3つの要素または意味があるとされています。

1つは清算的要素、もう1つは扶養的要素、残りの1つが慰謝料的要素です。

これまで、財産分与については、「結婚するときに一緒になったものは離婚するときに分ける」という表現を使ってきました。この表現が意味しているものは、1つ目の「清算的要素」です。

財産分与の3つの要素または意味のうち、最も大きなウェイトを占めるのが、「清算的要素」です。

イメージで言うならば、まずは清算的要素という視点で夫婦の財産を大まかに分け、扶養的要素と慰謝料的要素で修正をしていくというと分かりやすいかもしれません。

今回は、この「清算的要素」について考えてみます。

3 清算的要素って?

清算的要素は、その言葉のとおり、夫婦の財産関係を「清算」、つまり、夫婦が2人で財産を共有している状態を解消することを目的としています。

この場合、原則として、婚姻期間中の夫婦の協力関係は同程度であったと考えて、財産を2分の1ずつ分けることになります。

このことは、夫婦の一方が専業主婦・専業主夫であったとしても、基本的には同じです。

なぜなら、夫婦の一方が外で稼ぐことができたのは、もう片方が育児や家事を担ってくれたお陰だと考えられるからです。

また、たとえ相手に不倫をしていたなどの事情があったとしても(このような配偶者を「有責配偶者」といいます。)、やはり財産を分ける割合は、基本的には2分の1と考えます。

というのも、清算的要素という視点で財産分与を考える場合には、相手が有責かどうかという事情はいったん措いておくからです。

このように、「清算的要素」は、「夫婦の共同の財産は、夫婦が同程度協力し合って作り上げたものなので、分け方は2分の1とする。」とする考え方です。

4 あなたの立場が有利な場合

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここから本題です。

このように、財産分与は基本的には2分の1の割合で分けることになります。

しかし、あなたの立場が有利だった場合には、少し話が違ってきます。

ここで復習ですが、「あなたの立場が有利」というのは、法的に言えば「離婚事由がないこと」を意味します。もっと簡単に言うと、あなたの方に「離婚されても仕方がないよね。」と指摘されるような落ち度がないことです。

このような状況で相手から離婚を求められた場合には、あなたは、「離婚に応じてもよい。そのかわり、2分の1以上の財産が欲しい。」、「離婚に応じてもよい。その代わり、夫婦の財産のうち、これとこれは私のものにしたい。」と主張しやすくなります。

なぜなら、相手にとっては、あなたに離婚に応じてもらえない以上、離婚が成立しない可能性が高いからです。

言い換えれば、相手としては、できるだけ早く離婚を成立させるためには、あなたの要望を多少無理してでも聞き入れようと思う状況にあるのです。

5 弁護士を入れた方がいい場合

今回は、財産分与の意味合いについて、掘り下げて考えてみました。

ただ、相手によっては、清算的要素の意味や、立場の有利・不利の意味を十分に理解しておらず、一方的に高圧的な態度で不公平な財産分与を主張してくる人もいます。

そのような場合には、当事者同士で話し合ってもなかなか着地点は見いだせないでしょうから、弁護士を入れて、専門的な立場から相手を説得することも考えた方がよいでしょう。

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カテゴリー: 財産分与, 離婚