離婚の準備その3 どこに住みますか(賃貸)

1 財産分与 ~賃貸~
こんにちは、弁護士の狩野です。
ここまで、離婚する場合に問題となる「財産分与」について、
お財布と住居という観点から考えてみるとよいことをお伝えしました。
その上で前回は、
財産分与のうち住居について、
今あなたが住んでいる家が持ち家である場合を考えてみました。
今回は、今あなたが住んでいる家が、
賃貸である場合について考えてみます。
なお、離婚が成立するまでには多くの問題を解決していく必要があります。
そのため、今、自分が何について考えているのか、ときどき確認していくのがよいと思います。
2 財産分与の対象になるのは、賃借権
今あなたが住んでいる家が賃貸の場合、
夫婦で分けることになる財産、
すなわち財産分与の対象になる財産は、
何でしょうか。
賃貸物件自体は、当然ながら貸主の財産です。
したがって、貸主から家を借りて住む権利、すなわち「賃借権」が財産分与の対象です。
3 夫婦とも賃貸物件に住む気がない場合
もし夫婦ともがその家に住むつもりはないということであれば、賃貸借契約を解約します。
解約時に敷金が戻ってきた場合には、これについて財産分与を考えることになります。
4 夫婦の片方が賃貸物件に住み続ける場合
もし夫婦の一方がその家に住み続けるのであれば、
住み続ける人が財産分与として賃借権を取得します。
この場合、持ち家であれば代償金の問題が出てくるところです。
もっとも、賃貸物件の場合、賃借権自体の市場価値は考えにくいのが通常です。
そのため、「賃借権をあなたにあげます。賃借権の価値は〇円なので、
その分、私がほかの財産をもらいます。」という主張は、
法的には説得力のない主張になります。
ただ、家から出ていく方には引っ越し費用がかかることがあると思いますので、
引っ越し費用分のマイナスを財産分与で考慮してほしいと主張することが考えられます。
5 借主の名義変更に注意
夫婦の一方が離婚後も同じ賃貸物件に住む場合、注意したいのは、借主の名義変更の点です。
たとえば、もともと夫名義で建物を借りていたとします。
離婚に伴いあなたがその家に住み続けることになりました。
この場合、法的には、賃借権が夫からあなたに譲渡されることになります。
家の貸し借りは通常、貸主が借主の経済力などを信頼できると判断した場合に行われています。
そのため、借主が賃借権を勝手に第三者に譲り渡すことを認めると、貸主は困ってしまいます。
ですから、賃借権を勝手に譲り渡した場合には、貸主が賃貸借契約を解除することができるとされていることが多いのです。
ただ、離婚に伴って賃借権を他方の配偶者に譲り渡す場合には、
賃貸人から承諾をもらう必要はないという考えもあります。
とはいえ、賃貸人から、「夫が勝手に妻に賃借権を譲り渡した。」として、
賃貸借契約を解除すると主張してくることも考えられます。
そのような事態を避けるために、事前に賃貸人に承諾を得ておくのが安全でしょう。
6 公営住宅の場合
なお、住んでいる家が公営住宅の場合には、元夫婦間とは言え、勝手に借主を変更することは原則として許されていません。
ただ、この場合でも、自治体から許可が出れば借主を変更できる場合があります。
公営住宅の場合には、事前にこの点についても調べておくとよいでしょう。
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